「大トロ」
育成予備校のレッスン終了の締めの挨拶で
(とくに育成クラスに昇格間近の数人に)ハッパをかける。
もう少しの「貧欲心」と「真剣味」が揃えば、
今すぐにでも育成に上げてもいいと考えているんだけど
まだ何かが足りない・・・。
みんなを鼓舞するため、かなり大袈裟に
「コーチは、一所懸命ずーっとテニスをしてきたから
もし仮にこのレッスンを終わってその前の道で
車に轢かれて死んだとしても(まだ死にたくないけど)
笑いながら「おつかれー」と言ってあの世に行けるよ。」
と煽(あお)ると六年生のT郎が
「僕も死んでも平気だなー。」
と答えたので絶句した。腑に落ちない僕は
「T郎、君はあのテニス(の内容)で満足なのか?」
と問い詰めると
「でも、大トロ食べたし・・・・。」
と幸せそうな笑みを浮かべた。
呆きれた―。
どうやら、大トロを食べて
T郎の人生の大半の目標は成就したらしい・・・。
やれやれ。
武士が命を懸けて守るほどに重視した土地(所領)があったように
僕にとってはタウンテニスがそうだ。
子供達の一所懸命な姿は何物にも代え難い。
T郎の両目が開く日を待とう・・・。




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